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第117回 私のパンに私が塗ったバターは私のもの(ドイツ)

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3月8日、「画期的判決」のニュースがドイツから飛び込んできた。男性より7%賃金が低いのは女性差別だと訴えていた女性が、連邦最高労働裁判所の全面勝訴の判決を勝ち取った、という。 金属会社の営業担当スザンナ・デュマは、4年前、全く同じ仕事をしている同僚男性の給料が自分より月1000ユーロ、つまり7%多いことを偶然知った。彼女は会社側に格差是正を求めた。らちがあかなかったので、ドレスデンの労働裁判所に提訴した。しかし、1審、2審とも敗訴。「賃金格差は性差別に基づくものではない。賃金交渉力の差によるものだ」とする判決だった。 ■ 2021年、エアフルトにある連邦最高労働裁判所に上告。スザンナ側は「交渉力で格差が決まるのはおかしい」と主張した。 今年2月16日、同裁判所は「男性が交渉力に優れているからといって、男女賃金格差を合理化することはできない。これは『性による差別』である」と判定した。そして「会社は彼女へ、差額1万5000ユーロと慰謝料2000ユーロ(計約250万円)を支払え」と命じた。7%の格差をゼロ%にせよと言ったのだ。根拠は、EUの男女同一価値労働同一賃金の指令と、その国内法「ドイツEU機能条約157条」だった。 離婚後3人の子を育てるスザン ナは、「勝利は娘たちと全ドイツ女性のもの」と歓喜し、「あなた のパンにあなたが塗ったバターを誰かにかすめ取られるようなことを許してはダメ!」と女たちを鼓舞した。 ■ さて、今日のポスターは、2004年夏、ベルリンで入手した。ドイツ統一サービス産業労働組合(通称ヴェルディ。専従職員3000人、組合員200万人、うち女性が100万人以上。ドイツ最大の女性組織)が作成した。ヴェルディの重要な目標のひとつである「男女同一価値労働同一賃金」を訴えている。 ヴェルディの「女性とジェンダー平等」部代表アレクサ・ヴォルフスタッターは、ポスターの趣旨について私のメールでの質問にこう答えた。 「私たちの最大のテーマは、今も昔も、男女同一価値労働同一賃金を勝ち取ることです。このポスターは2004年の国際女性デーに使われました。女たちは『男女平等機会』『年金拡充』『不安定雇用禁止』『全被雇用者への社会保障』『仕事と家庭の両立』といった旗を掲げています。20年前のテーマは今もちっとも古くない。現在ドイツの男女賃金格差は18%もあるの

第116回 賃金男女比100対75から100対83へ(スウェーデン)

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昨年12月5日、北欧と日本の女性労働に関する国際会議があった。ハイライトは、世界で最も男女格差の小さな国アイスランドのヨハネソン大統領のスピーチ。熱血フェミニストを妻に持つ、バツイチ男性だ。 「1944年の学校では、男の子なら『あなたが大統領だったら何をするか』、女の子なら『大統領の妻だったら何をするか』と質問されました。それから30年後の1975年10月某日、アイスランドの女たちは職場でも家でも働くことを一切やめる“女のゼネスト”を行ないました。女性がいかに社会に貢献しているかを男性たちにわからせるのが目的でした。このストの5年後に初の女性大統領が誕生しました」 次に、こうも述べた。 「僕 自身、5回も育休を取ったんです。女性がチャンスを奪われるということは、人口の半分が苦しむのですから、 社会全体が経済的に苦しむといえます。『育児休暇制度』や『男女同一価値労働同一賃金のための法律』は、今のアイスランドではかなり進みました。しかし、セクハラもDVもまだありますから、完璧ではありません。私たちは性差別のない社会へと、意識して、立ち向かっています」 今日のポスターは、アイスランドも加わる北欧5カ国の中で兄貴分にあたるスウェーデンの男女平等オンブズマンが2000年に作った。「男女同一価値労働同一賃金」を訴え、「女性より25%多く稼いでいるのは、どのジェンダーですか?」とある。 スウェーデンは、2008年に差別禁止法ができて、それまでの男女平等オンブズマンが差別禁止オンブズマンに変わった。性、人種、出身、宗教、障害、性的指向、年齢など多岐にわたる分野の人々の差別を禁じた。雇用ばかりでなく、社会現象の全てが対象だ。そのかいあって、男女賃金は100対83まで改善することができた。でも、アイスランドはさらにその上を行って100対89だという。大統領の意気軒昂さ、なるほどと思った。 さて、わが日本。冒頭の国際会議のパネリストの一人だった私は、OECD「世界ワースト2位」日本の男女賃金格差が縮まらないのは、女性差別のほかに非正規差別があるからだと訴えた。非正規労働者は2000万人以上で、雇用女性の54%だ。賃金は男性正職員を100とすると、女性正職員が70、女性非正規はなんと42なのだ。 私は、怒りを込めて発言した。終わってからフィンランド大使とイギリス大使館