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第127回 男女平等教育こそ平等社会への道(フィンランド)

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フィンランド女性は1906年に参政権を獲得した。ヨーロッパでは最も早かった。 かれこれ30年ほど前、私はヘルシンキにある「フィンランド女性会議」(1911年創設)を訪問した。同会議幹部たちから「女性参政権を世界で最も早く獲得したのはニュージーランドと言われていますが、原住民のマオリ族には参政権を与えませんでした。ですから、我が国こそが世界初なのです」と聞かされた。 さらに、こうも言った。 「フィンランド女性は、男性と同じ年に参政権を獲得したので、世界で最もジェンダー・ギャップ(性差)の小さい国ともいえます」 日本女性の選挙権獲得は1945年。つまり、女性たちは、男性が選挙権を得てから20年もの長きにわたって待たされた。日本に限らず多くの国がそうだった。 ■ この訪問から10余年後。 2006年、フィンランドは女性参政権獲得100周年を大々的に祝った。男女平等社会を求めて闘ってきた女性の歴史を、あらゆる分野から顕彰する官民あげての一大イベントだった。その時の記念すべきグッズのひとつが、今日のポスターである。一翼を担った「フィンランド女性会議」から私に寄贈された。 勉学する女の子の真剣な表情。使っているのは黒板とチョークだ。タブレットを使う現代っ子にはとても信じられないだろう。 ■ フィンランドの教育はかねてから世界中で注目されてきた。そのもとになったのは、OECDの世界の子どもの学力を測る「国際学力調査PISA」だった。PISAは、15歳の読解力、数学、科学3分野をみるテストだが、フィンランドは20年前に世界一を獲得し、その後もヨーロッパ諸国の中で上位を維持している唯一の国だ。 ところが昨年暮に公表されたPISA2022で、フィンランドは激しく落ち込んでしまった。読解力14位、数学20位、科学9位!フィンランド・メディアは「フィンランド政界 PISAの大失敗で大騒ぎ」「PISA崩壊にヘンリクソン教育大臣『流れを逆転させねば』と語る」と報じた。とはいえ、こんな表現もある。 「フィンランドは、数学において女子の成績が男子よりも優れた唯一の国」 「科学では女子522点、男子500点。 女子が男子より22ポイントも上回ったのはフィンランドのみ」 差別・選別のない多様性社会こそ未来のあるべき姿だ。PISAで順位が少しばかり下がったとはいえ、フィンラン

第126回 移民難民を受けとめる バイキングの末裔たち(ノルウェー)

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  2023年9月18日夜7時半、ノルウェーに移住してきた大人たちにノルウェー語を教えるローセンホフ成人学校を訪ねた。分校も含めると教職員約180人、生徒約2000人。「世界最大のノルウェー語研修センター」だ。100年以上も昔にオスロの小学校として建てられ、ナチスドイツ占領時代は、親衛隊の本部・兵舎に使われた。   210番教室に入ると男女14人が座っていた。担任のビヤーネ先生が小声で言った。「出身はアジア、アフリカ、中東など全世界です。個人情報は、母国の当局と生徒とに悪影響を与える場合もあるので聞かないでほしい」 でも、自ら語るのはかまわない。「元ポルトガル領ギニアビサウから来た」という男性がいた。職場から直行したらしく、黄色い土木作業着だ。「IT会社勤務の夫と、オスロ湾を見渡せるマンションに住んでいる」というインド人女性もいた。 先生はパソコン2台に超大型ディスプレイ、白板を使いながら、ノルウェー語でゆっくり話す。テーマは、朝。「何時に起きましたか」「朝食は何時でしたか」「誰と食べましたか」と質問し、生徒が答えていく。 「妻と食べました」と言った男性に、「パートナーは同性のこともありますね。ノルウェーでは普通のことですよ」と先生。なるほど、こんなふうにノルウェー社会に慣れさせるのだ。 いまやノルウェー人口の16%を移民が占める。2021年、国は211の自治体に対して5,025人の難民が定住できるよう要請した。 移民難民を守るのは「統合法」だ。法の目的は、言語習得とその教材内容の双方から、移民がノルウェーで永続的な職業生活を送れるようにすること。 年 22万3000 クローネ(310万1220円)の授業料給付金制度もある。25歳未満の生徒は、親と同居していない場合3分の2、同居中なら3分の1。給付金は課税対象だ。理由なく授業を休むと減額。ただし病欠や育休は認められる。 こうして、3年間ノルウェーに住めば、外国人にも地方議会への選挙権が与えられる。   今日のポスターは4年前、地方選を取材に行った時、オスロの駅で見た。 「男性」、「女性」、「白人」、「黒人」ごちゃ混ぜの現代ノルウェー人が叫ぶ、「あなたの選択を他人にまかせるな」「あなたの投票の権利を使え」 2023年秋、選挙を終えたオスロ市議会は、2児を抱えたシングルマザーのスリランカ移民、ゲイ