第89回 2020年12月10日 ベリット・オースに〝草の根ノーベル平和賞〟(ノルウェー)


 今年の「人民の平和賞」はノルウェーのベリット・オース(1928年生)に決まった。

この賞は、ノーベル平和賞に対抗した草の根のノーベル平和賞で、スウェーデンのオルストにある平和運動団体が運営する。受賞式は12月5日だったが、新型コロナの影響で来年3月6日に延期された。

女性運動家、政治家、平和運動家、社会心理学者、オスロ大学名誉教授。ベリット・オースには、「初の…」が、数えきれないほどついてまわる。

1971年のノルウェー地方選で、オスロ、アスケール、トロンハイム3市は、ノルウェー史上初めて(おそらく世界初)女性議員が男性を上回る議会となった。「男を消せ」キャンペーンの結果だった。

ノルウェーは国会も地方議会も比例代表制選挙。投票用紙には政党が決めた「候補者リスト」が記されているのだが、投票者は名簿の順番を変えることができる。60年代まで、どの政党も「候補者リスト」の当選圏(つまり上の方)は男性、下位は女性と決まっていた。彼女は、上位の男性の名前を消して下位の女性を上にあげて当選させるという運動を展開した。

1973年、ベリットは創設に加わった左派社会党の初代党首に。ノルウェー初の女性党首は、クオータ制を政党として初めて取り入れ、選挙で大躍進。他党の模範になった。

73年から77年まで国会議員に。ここで自らの屈辱体験を元に、男性による女性支配構造を「5つの抑圧テクニック」と題して世に出した。社会心理学者の面目躍如。その冊子は北欧中心に世界に広まった。アイスランドの「女のゼネスト」は、この冊子が火種となって燃え上がったのだそうだ。

さらには、アメリカの国際女性の平和ストライキにならってノルウェー平和キャンペーンを設立し、ノルウェー政府の「軍縮委員会」の創設につなげた。スウェーデン、デンマークの市民団体とともに、ノルウェー女性の平和運動を組織化。「人民の平和賞」受賞は、この活動が評価されたのだろう。

私はポケットマネーをはたいて2003年、彼女を日本に招待した。豊中市、名古屋市、武生市(現越前市)、高知市で講演。その全訳「支配者が使う五つの手口」は拙著『ノルウェーを変えた髭のノラ』(明石書店)で読める。

今日のポスターは、ベリットたちが開校した「フェミニスト大学」(ヘードマルク県ローテンで1983年)の宣伝に使われた。92歳の闘女にスコール(乾杯)!

 

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