第88回 2020年11月10日 ペンは力なり (ノルウェー)


 羽根ペンがヒラヒラと揺れ動き、シルエットの女性の口もとからは歌が流れてきそうなポスターだ。IT時代の今日なら動画になって一瞬で世界に流れるのだろうが、これは1986年のことだった。メスマークのピアスが象徴的な「国際フェミニスト・ブックフェア」は、同年6月21日から1週間にわたってノルウェーのオスロを中心に展開された。

2年前の1984年6月、イギリスで世界初の国際フェミニスト・ブックフェアが開かれた。会場となったロンドンのコヴェント・ガーデン周辺には、22カ国100以上の出版社によってフェミニスト関連の出版物のスタンドが所狭しと立ち並んだ。わずか2日間だったが、参加者が世界から駆けつけて、大成功だった。

熱気と興奮の中、次の候補地としてノルウェーが決まった。1960年代に女性解放運動に火がついた国。81年にはグロ・H・ブルントラント(42歳)が初の女性の首相に就任した国。ノルウェーには、女性たちのやる気が横溢していた。

オスロのブックフェアでは、多彩なイベントが企画された。展覧会、即売会、ワークショップ、討論会、セミナー、読書会、コンサート、演劇、映画、音楽…。一般読者に加え、作家、翻訳家、出版社、編集者、ジャーナリスト、批評家、印刷業界、デザイナー、販売、司書…と本に関する叡智が集結した。

最も人々の心を打ったセッションは、スペイン、ケニア、南アフリカ、北アイルランド、ウルグアイから作家を招いてのセミナー「作家という危険な職業」だったと記録にある。もの書きの女性が逮捕監禁されたり、村八分にあったことが報告された。リベラルといわれている国でさえも、マイノリティの女性は、著作活動そのものも、著作で聴衆を集めることも、極めて困難だったことが明らかになった。

それでも、古今東西、女性たちは迫害をかいくぐって書き続けた。ものを書くことによって、自らが置かれた第2の性(男中心社会で主体性を奪われた存在である女性)、貧困、抑圧などをはねのけようとした。書くことは生存に欠かせない行為、女性解放への闘いそのものだった。

ブックフェアはノルウェーの後、カナダのモントリオール(1988)、スペインのバルセロナ(1990)、オランダのアムステルダム(1992)、オーストラリアのメルボルン(1994)と続いた。

そういえば、1027日から11月9日まで読書週間だ。日本でも、こんな催しをやりたいと、つくづく思う。

 

コメント

このブログの人気の投稿

第98回 2021年9月10日 平等と多様性社会は選挙から(ノルウェー)

第97回 2021年8月10・25日 この力こぶが目にはいらぬか!(ノルウェー)

第92回 2021年3月10日 女のからだは政府のものではない(ポーランド)