第85回 2020年8月10・25日 #SAYHERNAME MARCH 彼女の名前を言おう (アメリカ)


 アメリカの新型コロナの感染者は440万人、死者は15万人を超えた。そんなパンデミック真最中のあちこちで、大勢の市民が集まって「ブラック・ライブズ・マター(Black  Lives Matter)」と叫んでいる。「黒人の命も尊重されるべきだ」という意味で、頭文字を取ってBLMと呼ぶ。

今年5月、ミネアポリスで黒人男性ジョージ・フロイドさんが白人警官に首を押さえ付けられて死亡。「息ができない」という彼の言葉と、生々しい映像とともに、BLM運動は世界に拡散した。

7月初め、偶然BLM運動のホームぺージを訪ねたら、黒人女性のシルエットが目に飛び込んできた。

「『彼女の名前を言おうマーチ』に参加を。 2020年7月4日午後4時、ボストンのヌビアン広場集合。BLM運動に参加して、黒人女性の命を哀悼し、誇り、祝おう」とある。

赤地部分に黒い文字で、無数の女性の名前がびっしりと記されている。「彼女の名前を言おう」運動は、BLM運動と表裏一体で続いてきた。これまで数多くの黒人女性たちも警官に殺されてきたが、男性ほどには騒がれもせず、名前さえ忘れ去られた。それに憤った女たちから「彼女の名前を言おう」運動が生まれた。

ポスターには、黒人女性を表す英語に「Black Womxn」が使われている。アメリカに留学した80年代、フェミニストの友人から「マリコ、もうWomanというmanがある言葉は使わないのよ」と言われたのを思い出した。

懐かしさがこみあげてきた。そうだ、「History」は「Herstory」に、「Fireman」は「Firefighter」に。それは、男性中心の言語や文化を変えようというアメリカ女性の知恵と情熱が込められた運動だった。いまだに夫のことを「主人」などと崇める日本に住む私は、すっかり忘れていた。

そもそもBLM運動を世に出したのもアリシア・ガーザという黒人女性である。女性運動家にして作家、全国家事労働者連盟のスタッフだ。

2013年7月、アリシアは、黒人高校生を射殺した被疑者(自警団)が無罪となった事件への抗議をフェイスブックに書き、最後に「黒人の命も尊重されるべきだ」と添えた。それに仲間の女性がハッシュタグをつけて拡散させて、運動に火がついた。

1人の黒人女性が先陣を切った市民運動に、いま白人女性、黒人男性、白人男性も呼応して「Black Lives Matter」を叫んでいる。未来にちょっと光が差してきた気がする。

 

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