第73回 2019年8月10・25日 「女たちのヨーロッパ」の時代到来(ドイツ)


 7月16日、EU(欧州連合)の議会は、欧州委員会の委員長にウルズラ・フォン・デア・ライエンを承認した。

欧州委員会はEUの行政府で、委員長は国でいえば首相。EUは60歳の誕生日を迎えて、初めて行政のトップに女性を選んだ。しかし、EU議会の現議員747人のうち賛成は383人。9票差の辛勝だった。

フォン・デア・ライエンは、EU議会で最多議席数を持つ国ドイツのCDUキリスト教民主党の国防大臣。メルケル首相の右腕とも言われた。EU議会では最大会派である中道右派に所属する。しかも、5月のEU議会選では女性がこれまでで最高の41%となって、男女平等の流れが加速されている。

それなのに、一時は「否認か」というニュースも流れた。明快に反対を公言したのは、EU議会で10%を占める「緑」会派の共同代表であるスカ・ケラー議員だった。

ドイツ選出の「緑」会派で、ドイツのEU議会選ではCDUに次いで多くの票を獲得した。彼女は「フォン・デア・ライエンの政策を吟味した結果、気候変動の問題について何ら具体的提案をしておらず、落胆した」と述べた。

EU議会の第二党である中道左派も彼女に批判的だった。そこに属するSPDドイツ社民党は、ドイツ国内ではCDUと大連立を組んでいるので、CDUから「反対なら国内での連立を解消する」とけん制されたという。

私が、EU選挙を取材したのは1999年のことだった。ベルリンの街には、この「ヨーロッパに、われら女たちを」という巨大なポスターがあちこちに貼り出されていた。当時はシュレーダー首相のSPDが政権を握っていて、女性議員を増やすことに熱心だった。

EU議会議員は、加盟国の人口比で定数が配分され、選挙は各国の直接投票で行われる。完全な比例代表制なので、有権者は政党を選ぶ。イギリスのような小選挙区制の国でも、EU議会選だけは比例代表制で行なわなければならない。

あれから20年、EUの比例代表制選挙で女性議員は確実に増えて、ついに4割を突破した。当然ながら「女たちのヨーロッパ」の時代到来だ。

7人の子の母であるフォン・デア・ライエンが、どんな公的育児政策を進めるのか、男女賃金格差の是正にどう励むのか、見ものだ。明確なやる気を見せなければ、他党の女性から指弾のつぶてが飛んでくるだろう。

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