第58回  あなたの家、みんなの家(イタリア)


 永遠の都・ローマ。その女性センターとは、どういうものなのだろう。10年前、 「女たちの家」(カーサ・デッレ・ドンネ Casa delle Donne)と呼ばれる女性センターを訪ねた。

今日のポスターは、その時に求めた1枚だ。ハートの上に「あなたの家、みんなの家」と書かれている。

女たちの家は、テーベレ河沿いのヴァチカンとトラステーベレのちょうど中ほどにあった。廊下の壁面いっぱいに70年代の女性解放運動の白黒写真。女性運動家たちが空きビルの占拠に成功した瞬間の風景、目抜き通りを覆う「妊娠中絶を合法化せよ」という巨大な横断幕、「女の革命」の旗がゆれるスペイン広場

17世紀の建物で、元は修道院。ローマ市が買い取り、全面改修して女性たちに提供した。2002年にオープン。何十もの女性グループが連帯して維持・運営する。家賃月100万円ほどを市に払うそうだが、自主性の横溢した伸び伸びとした雰囲気がいい。

約4000㎡の敷地に、3つの機能を持つ。1つはセクハラや夫からの暴力など女性の抱える悩み事への相談と支援の場。2つ目は世界の女たちが集える宿泊の場。3つ目はイタリアの女性解放運動を記録し発展させる場。「ここは女たちの長年の夢と闘いの結果、誕生しました」と広報のルイーザ・パパラルドさん。職員25人の1人だ。

中庭「マグノリア」。樹齢数百年というマグノリアの大木が、気温36度の日差しをさえぎる。読書、食事、団らん、待ち合わせ、集会に使われる人気スポットだ。

レストラン「ルーナ・エ・ラルトラ(直訳すると『月ともうひとり』)」。月には「1人の女性」という意味があり、女性たちが出会う場になるのだとか。ランチもディナーも楽しめる。

ホテル「オルサ・マッジョーレ(大熊座)」。シングル、ダブルから4人部屋まで40部屋あり、客は女性のみ。すべての部屋からマグノリアの庭を望むことができる。年中満室に近い。「女たちの家」の収入の大部分は、このホテル業による。

さらに60人程度の小ホール、130人程度の大ホール。そのほか会議室が何室かある。私が訪問した真夏の夜には、『魔女』と題されたセミナーが開かれており、小ホールはぎっしりで予定時間を1時間近くオーバーしているのに、熱っぽく語りあっていた。

日本にも、こんなオアシスがあったらいいなぁ。

2018年5月10日

 

コメント

このブログの人気の投稿

第132回 今も昔も「封建制の呪縛」(日本)

第131回 わが子を売られた奴隷は叫んだ(アメリカ)

第127回 男女平等教育こそ平等社会への道(フィンランド)