第56回 男女平等法の歌(ノルウェー)
2月14日、ノルウェーのアーナ・ソールバルグ首相が、お茶の水女子大で来日記念講演をした。女子高校生、女子大生など若い人たちで会場はいっぱいだった。首相はノルウェー保守党の党首で、グロ・H・ブルントラント(労働党)に次いで同国2人目の女性首相である。
彼女は「私の経験から話しましょう」と切り出した。
「私が学生だった1980年代、ノルウェーの男女の役割は大きく変化しました。職場の女性差別撤廃、妊娠中絶の合法化、家庭における女性への暴力根絶、保育所の増設。男女平等法ができて、女性たちはどっと職場に進出していきました」
今日のポスターは、1990年代にノルウェーの男女平等推進機関である「男女平等オンブッド」が、男女平等法の普及のためにつくった。
ノルウェー語で「男女平等法の歌―男女賃金格差に反対する楽器」と書かれている。弦楽三重奏を奏でる3人の女性。後ろのほうで、不快な顔をして耳をふさいでいるスーパーマン風の男性。バイオリン、ヴィオラ、チェロかなと思ってよく見ると、これは楽器ではない。
「第14条」を英語にすると「§14」となるのだが、女性たちが持っているのは§(セクションマーク=条項)、つまり法律の条文を表す記号だ。法制度をだれの目にも留まるようなポスターにするのはさぞ難しかっただろうに、本当に良くできている。
ソールバルグ首相は、お茶の水女子大で、政界への女性進出と「クオータ制」に触れた。首相の率いる保守党は法制定の際に、クオータ制に反対した。今でも保守党は、党規約にクオータ制を明記していない。しかし実際には党内女性部の力が強くて、選挙候補者名簿(リスト)を、ほぼ男女交互にしている。
ノルウェー国会の41%は女性議員だが、これに関して首相は「背景には比例代表制選挙がある」とも語った。なぜなら、比例制の選挙で有権者が選ぶのは、候補者個人ではなく政党のリストなのである。そのリスト作成会議で、男女半々にしたり、マイノリティを入れたりできるのだ。
首相はベルゲン大学の学生の頃に18歳でベルゲン市議会議員となり、2期つとめた。その後、20代で国会議員に初当選。それもこれも、比例代表制のたまものなのは言うまでもない。
2018年3月10日
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