第55回  セクハラやめろ!(スウェーデン)


 ハリウッドの大物プロデューサー、ワインスタインの性暴力が『ニューヨーカー』と『ニューヨーク・タイムズ』に暴露されたのは、2017年10月だった。すると堰を切ったように「私も」「私も」と女たちの告発が続いた。ツイッターによる「#Me Too(私も)」は世界中に広がり、今も止まない。

中でもスウェーデンのそれは怒涛の勢いだ。映画・演劇界では、オスカー受賞者アリシア・ヴィキャンデルを含む653人。オペラ界では世界的ソプラノのニーナ・シュテンメを含む690人。司法界では女性弁護士が、「セクハラ容認文化を根絶しよう」という署名運動を開始し、11月半ば6000人に達した。

男女平等大臣、中等教育大臣、文化・民主主義大臣は、やる気を表明。ついにスティファン・ロベーン首相は1218日、「セックス同意法」という新しい法律を国会に提案し、記者会見でこう述べた。

「相手が望んでいるかいないか、はっきりしないなら、セックスをしないことです。私たちは、社会の考え方、価値観を変えなければなりません」

スウェーデン最大の日刊紙『ダーゲンス・ニュヘテル』の文化担当デスクは「#Me Too」を女性参政権に次ぐ、国を揺るがす女性運動と評価した。

今日の1枚は、そのスウェーデンの20年ほど前のセクハラ防止ポスターで、女の子が不気味な蛇の首をしめて「やめて!」と叫んでいる。スウェーデン男女平等オンブズマンが作成した。

スウェーデンは、1998年から数年間かけて、中学生向けセクハラ撲滅プロジェクトを開始した。校長や教育関係者向けの啓発本がつくられ、泊まり込みの研修なども行なわれるなど、セクハラ撤廃運動が展開された。このポスターはその時に、子ども向けに作成された。

ポスター下部のスウェーデン語を訳すとこうなる。

「あなたの自尊心が奪われることがあってはなりません。性的な言葉を言われて我慢することもありません。あなたを口汚くののしったり、ぶったりする権利は誰にもありません。いいですか、あなたは、価値のある人間です。いじめやいやがらせがあれば、校長先生は闘ってくれます。もしも、不快なことをされたら、校長先生か、あなたの信頼する大人に通報しなさい。または、男女平等オンブズマンに電話して、相談してください。電話番号……」

スウェーデンのこの運動の盛り上がりには、国をあげて女性差別撤廃と男女平等推進に取り組んできた20年の歴史がある。それにつけても、わが日本政府の知らんぷり、日本社会の静寂。なんだこれは。

2018年2月10日

 

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