第54回  平和 女性解放 連帯(ノルウェー)


 平和 女性解放 連帯

大空に飛び立たんばかりの鳩

女性解放のシンボル、メスマーク

左手には、命の糧の小麦

スカートは、小麦を刈り取った豊穣の大地

 

ポスターは、ベリット・オース(89)によって大切に保管されていたものだ。ベリットは、ノルウェー左派社会党の初代党首でオスロ大学名誉教授。今や日本でも普通に耳にする「クオータ制」は、女性議員を増やす策として彼女が初めて実践した。手前みそになるが、80年代、日本に翻訳・紹介したのは私だ。

何年か前、オスロ郊外の自宅を訪ねた。その数カ月前、大雨で裏庭の端を流れる小川が氾濫を起こし、物置小屋にあった本や書類が水浸しになった。辛くも運び出されたポスターの1枚がこれだった。私は、コピー使用の許可をもらって、カメラに収めた。

下に書かれた2語は「ノルウェー女性連盟」にあたるノルウェー語。ノルウェー女性連盟は1954年、「主婦同盟」と「ノルウェー民主主義女性同盟」が合体してできた超党派のフェミニスト団体だ。60年代に消えかかったものの、ウーマンリブの世界的潮流に乗って70年代に息を吹き返し、一時は1200人の会員を擁し、99年に幕を閉じた。ベリットがポツリと言った。

「この団体はね、共産党の回しものって言われてたの」

ポスターに魅せられた私は、帰国後、ベリットに「なぜアフリカ女性? 作者は? いつ、何に使った?」などと繰り返しメールをした。しかし90歳に近い彼女に、私の問いは届かなかった。

国立大学図書館館長を務めた親友マグニ・メルヴェールに調査を依頼した。女性運動家だった彼女は、当時の同志たちにポスターの画像を送信しては尋ねまくった。結論は、「72年から80年までに使われたものらしい。作者は不明。70年代は、反戦、妊娠中絶合法化、人種差別反対など、抵抗運動が無数あり、おびただしいポスターやチラシが作られた。パテントなど誰も気にしなかった。作者もおおらかなボランティアだったと思う。アフリカ女性は、アフリカとの連帯を表したのかも」

「平和、女性解放、連帯」という古くて新しい世界的テーマ。寝ても覚めても私の目に飛び込んでくるように、寝室に飾ってある。

2018年1月1日

 

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