第51回  夜、一人で歩く権利を(ニュージーランド)


 女たちに 夜を取り戻せ

女たちよ 手をつなごう

女たちには 夜、一人で歩く権利がある

どんな服を着ようと、どんな道を歩こうと

私たちには 一人で歩く権利がある

女たちに 夜を取り戻せ

シュプレヒコールは、夜のブロードウェイいっぱいに広がった。留学先ニューヨーク・コロンビア大学キャンパスで「夜を取り戻せに参加を。性暴力をなくそう」というポスターを見て、私も連なった。忘れもしない、1982年9月11日だった。

歌ったり、跳ねたり、鳴り物を鳴らしたりと、マーチは続いた。終点のメトロポリタン美術館前に到着した頃には800人にふくれあがった。地べたに座って、臨時野外ステージに登壇する人たちの告発を聞いた。手話通訳つきだった。

ろうあ協会のメアリーと名乗る女性は、口のきけない人にとって性的嫌がらせや強姦がどんなに恐ろしいかを手で話し始めた。「警察や病院でも、それはそれは苦労します」。また、年配の女性は「強姦被害者は若い女性だととられがち。でも違います。実は…」と自身の辛い体験を語った。嗚咽している人もいた。

「夜を取り戻せ」運動は、1976年、ベルギーのブリュッセルで始まった。国際会議「女性への犯罪に対する国際法廷」に集まった40カ国、2000人の参加者が女性への暴力撲滅を掲げて夜の街に繰り出した、と記録されている。その後、イタリア、イギリス、アメリカ、オーストラリア、インドと続き、数年後には世界各国で毎年行なわれるようになった。2017年の今も、世界のどこかで行なわれている。

この連載に、昔、コロンビア大学で見たポスターを紹介できたらと考えて、あの手この手で探したが、見つからなかった。しかし今年初め、ネット上によく似たポスターを見つけた。1979年、ニュージーランド初の「夜を取り戻せ」に使われた記念すべきポスターだった。

ウェリントンにあるビクトリア山で何人もの女性が強姦された。事件に憤激した女たちが、手に手にかがり火を持ち、ドラムを打ち鳴らして町を練り歩いたという。

三日月をわしづかみにするデザインが、手書きの素朴さに映える。作成したのは、その2年前に創設されたウェリントン強姦救援センター。同センターと、保存先の国立図書館Alexander Turnbull Library がポスターの管理をしていた。私はポスター使用申請書を提出し、それを読んだ2機関が連携してポスター使用許可を出してくれた。感謝を込めて、ここに記す。

 2017年10月10日

コメント

このブログの人気の投稿

第132回 今も昔も「封建制の呪縛」(日本)

第131回 わが子を売られた奴隷は叫んだ(アメリカ)

第127回 男女平等教育こそ平等社会への道(フィンランド)