第47回 ガンバッテネ、男性諸君!(ノルウェー)
日本の国会や地方議会には、女性議員が余りにも少ない。衆院は1割以下、町村議会に至っては、3分の1が「女性ゼロ」だ。国連からも「是正しなさい」と何度も勧告を受けてきた。
そこで日本政府は「政治分野における男女共同参画推進法案」を今国会にかけ、「候補者数を男女均等に」と政党に努力を促す姿勢を見せた。諸外国のような強い表現にするべきだと運動してきた女性団体からすれば、実に生ぬるい法案なのだが、日本会議系の自民党議員らは、この法律そのものに反対の声を上げた。
「法律をつくることで、かえって男女の対立が生じてしまう」(山谷えり子議員)
「女性の社会進出で社会全体が豊かになっているとは思えない」(西田昌司議員)。
今日の1枚は、1990年代末、ノルウェー国中に貼られたポスターだ。当時、クオータ制の浸透によって政界は男女半々に近づいたものの、経済界は別世界だった。そこで、政府の男女平等推進機関がこんなキャンペーンを開始した。
「さあ、これが我が国の指導者たちです。新時代にふさわしい多様性と多面性を見事にかねそなえていますネ」
ポスターにはいくつかのバージョンがあり、この1枚ではノルウェー屈指の大企業、ヨートン株式会社の取締役会がやり玉にあげられた。
ご覧のとおり、同社CEOと取締役8人は全て男性。皮肉たっぷりのキャプションがついている。
「ヨートンの取締役はこれで全員です」
「ガンバッテネ、男性諸君!」
男女半々の政界を見慣れたノルウェー国民の目には、ポスターは奇妙に映った。
「大臣の半分は女性なのに、会社のトップは男性だけなの?!」
市民に疑問の渦が巻き起こった。
2003年、ノルウェー政府は、会社法の改正案を国会に提出し、同案は成立した。
「株式上場会社は2008年から、国営会社は2004年から、取締役会に両性が少なくとも40%いなければならない」(会社法6条11a)
私が館長だった2003年、豊中市男女共同参画推進センター すてっぷは、このポスターを含む多数のポスターを展示して「ポスター展&ギャラリー・トーク」を開催した。市民が大勢やってきた。このポスターを見た人から「男ばかり。ノルウェーも日本と同じね」とのつぶやきがもれた。
政界が男女半々に近づいていたノルウェーの人々には、このポスターの効果はあった。しかし日本では「皮肉」が通じないことがわかって、私たちはがっかりした。
2017年6月10日
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