第46回 支配者が使う五つの手口(北欧ほか世界各国)
今朝(4月22日)、ベリット・オースから封書が届いた。開けたら『支配者が使う五つの手口』というベリットの名著のミニ本が出てきた。
「最近、バルセロナで出版されたカタルーニャ語版です。100冊送られてきたので、1冊マリ子に送ります」。
ベリット・オースは当年89歳。オスロ大学名誉教授、元ノルウェー国会議員、元政党党首。
70年代、「決定の場は女性が40%以下であってはならない」というクオータ制を、世界で初めて社会に導入させた女性である。
だが、ベリットの名をもっと有名にしたのは、「クオータ制」ではなくて『支配者が使う五つの手口』という小冊子だった。
彼女は、まず「女性差別の解消には、女性の政治進出が一番」と唱えて「クオータ制」を政党に根づかせた。だけど、女性が立候補する気にならないことには話は始まらない。
そこで、自らの自信喪失体験を心理学的に分析し、男性が女性を抑圧するときに使う方法を「五つ」にまとめた(*)。
女性は、職場でも家庭でも、自信を喪失させられることが多い。だから『支配者が使う五つの手口』を知ると、「あ、これは私の身に起こったことだ」と気がつく。一方、男性は「あ、あの時、僕は女性を無視していたのだ」と気づかせられる。
『支配者が使う五つの手口』は70年代から、北欧諸国を中心に世界に広まった。アイスランドでは、ベリットが講演したあと「女性党」が結成され、ついには「選挙で選ばれた世界初の女性大統領」が誕生することになった。
私は、1995年の北京国連女性会議に参加した時、中国語版が出ていることを知った。「日本でも」と考え、ベリットの許可を得て英語版を和訳した。拙著『ノルウェーを変えた髭のノラ』(明石書店、2010)に全文を紹介している。
今日の1枚は、スウェーデン・ヴェクショー市男女平等委員会が作成したものだ。私が豊中市男女共同参画推進センター初代館長だったとき、ベリットの来日講演会を企画した。その際ヴェクショー市の承諾を得てポスターにし、館内に展示した。
『支配者が使う五つの手口』を一人でも多くの女性たちに知ってもらって、“自信喪失”の罠を打ち破ってほしい―そう願いながらベリットは、いまも90歳近い老骨に鞭打って運動を続けている。
2017年5月10日
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