第44回  反トランプ480万人のデモ(アメリカ)


 ドナルド・トランプの下劣な言動には、私も虫唾が走った。

公的健康保険の廃止、妊娠中絶反対、メキシコとの国境に壁、銃規制緩和、テロ容疑者への拷問容認…集会で障害を持つニューヨークタイムズ記者の物まねをしてあざけった。「メキシコ人はレイプ犯。麻薬や犯罪を持ちこむ」と決めつけた。「イスラム教徒は完全に入国禁止」と宣言した。辛辣な質問をした女性ジャーナリストを「彼女のどこからであれ、血が出ていた」とからかった。

彼が友人に「スターなら、女に何でもできる。女性器をつかんだり、な」と告げる言葉がワシントンポストに公表された。

1月21日、トランプに反対するデモ「女たちのワシントン行進」がアメリカの首都であった。ワシントンで50万人、全米で460万人、世界で480万人。ベトナム反戦デモ以来最大規模と報道された。

ワシントンの写真は、ピンクのニット帽をかぶる人たちでいっぱいだった。トランプの「女性器をつかめ」に言葉を失った参加者たちは、子猫の形のニット帽をかぶって参加したのだ(実は、女性器Pussyには子猫の意味もある)。

ポスターには、「女性の権利は人権である」と書かれているが、動詞ARE(=である)がピンクの毛糸で描かれ、それで編んだニット帽が2つ見える。これがデモのシンボル「子猫ちゃん帽」だ。

デモの2カ月前、不動産王トランプが、ヒラリー・クリントンを抑えてアメリカ大統領に決まった。

ハワイに住むテレサ・シュックは怒りを誰かと共有したいと思って、フェイスブックでデモを呼びかけた。翌朝、「デモ行進に参加したい」という声がパソコンにあふれた。その数が30万人を超えた。

この呼びかけに呼応して、中央委員会がつくられた。

名誉代表にはグロリア・スタイナム(フェミニスト)、アンジェラ・デービス(黒人運動家)、ラドーナ・ヴィタ・タビティト・ハリス(先住民運動家)、ドローレス・ヒエッタ(労働運動家)の4女性とハリー・ベラフォンテが名を連ねた。委員は女性運動家に加えて、黒人運動、環境運動、銃規制運動、移民の権利運動、投票権拡大運動……などに携わる若者やネット専門家、音楽家など総勢21人(女18、 男3)。

ワシントンに行けない私は、1月21日の真夜中に「日本から平等と平和に連帯! 2017年1月21日」と書いた紙を持って自撮りし、フェイスブックに投稿した。直ちにアメリカから「おー、マリ子、健在なり」と返信が届いた。

 2017年3月10日

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