第40回 女性参政権行使70周年を祝えるのか(日本)
戦後すぐの1946年4月、日本女性は投票所に足を運ぶことを初めて法で許された。その衆議院議員選挙で、全国から79人の女性が立候補し、何と39人もが当選した。
秋田では和崎ハルが立候補して、ダントツのトップ当選。今日の1枚は、女性初の代議士・和崎ハルを描いたミュージカルの公演ポスターで、「女性参政権行使70周年」を記念した企画である。
美容師だった和崎ハルは、白い割烹着を身につけ、右手にハサミ、左手に櫛を持っている。夫の死後、5人の子どもを育てるために秋田で初の美容院を開業した。髪を結いに来る芸者さんたちから身の上相談を持ちかけられた。遊郭に売られる貧農の娘、字が読めないばかりに騙される娘、前借金を返せずに苦界に沈む芸者…。憤りを隠せなくなった彼女は公娼制廃止運動にのめりこむ。
知人の選挙応援をして、政治腐敗を目の当たりにする。1票約3円の買収、警察から不当監禁されての自殺。怒った和崎は、新聞や雑誌に「女性が政治に参加していくことが選挙の浄化に最も効果がある」と投稿する。
1929年に「秋田婦人連盟」を創設して、政治教育講演会や買収防止運動を展開。翌1930年には女性参政権を求めて「婦選獲得同盟秋田支部」を創設。1932年になると、市川房枝や山高しげりを東京から招き、秋田市で「東北婦選大会」を開催。
さて、このところ連日、富山市議会議員の公費横領事件が報道されている。自民党と民進党の男性議員9人が、政務活動に使うべき公費を飲み食いに使ったり、金額を水増しした領収書を偽造したり…。2012年の衆院選に出た私も、似たような事件に遭遇した。選対幹部の1人が、ポスター張り労賃の偽造領収書を作っては、政党交付金からその分を自分のポケットに入れていた。わかっただけで偽造領収書は25枚! 悪質だったが、書類送検されたものの起訴猶予だった。
日本の「政治とカネ」のスキャンダルは底なし沼だ。兵庫の野々村県議事件、猪瀬都知事事件、甘利大臣事件、小渕優子事件、日歯連事件、舛添都知事事件…。
「女性が参政権を求めるのは一部特権階級の手にのみ委ねられて居る今日の政治の改善を図りたいからである」
約100年前の和崎ハルの文章は、残念ながら今日でも強い説得力がある。
2016年10月10日
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