第3回 仕事は男の子選びと同じよ(ベルギ―)
新作ファッションの宣伝と見まがう、このポスターを見たのは、1994年春、ベルギーの首都ブラッセルだった。
黒のジャケットに白のミニスカート、黒タイツの若い女性が、腕組みしてこちらを見据えている。バックはすみれ色だ。
キャッチフレーズは、「仕事は男の子選びと同じよ。一番先に出会ったからって、それに決めちゃダメ」。
ポスターを見せてくれたのは、ベルギーの雇用・平等省大臣の政策秘書ミケ・ドゥヴリガー。大臣のフロアの端にある12畳ほどの独立した部屋だった。デスクの横の壁には女性問題の啓発キャンペーン用ポスターがびっしりと張ってあった。
「現在、ベルギー雇用・平等省が取り組む課題は3つ。女性をあらゆる労働分野に進出させる政策、性暴力を根絶させる政策、方針決定への女性の数を増やす政策です」。
第一課題の「あらゆる労働への女性の参加」を進めるために「アファーマティブ・アクション法」がある。その法によって、女性の少ない分野に優先的に女性を採用、昇進させるための実行計画の提出が、すべての公共機関に義務づけられている。
たとえば5年間で、国レベルの警察官の25%を女性にしなければならなくなった。そのため、採用基準の「身長170㌢以上」などが撤廃され、男性に有利だった体力テストの中身も変わった。
一方、女性の側の意識変革も促す。「若い女性たちに、ありきたりの仕事にとびつかないように、って呼びかけるポスターがこれです」。
ポスターと同じ写真を表紙にしたパンフをめくってみた。そこには、機械工、電気技師、産業工学エンジニア、土木専門家…といった職業に就いている若い女性たちが満載されていて、彼女たちは口々に、こういう仕事がいかに楽しいかを語っていた。
男性識者に言わせないところが、いい。
2013年2月10日
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