第19回 民主主義vs黄金の夜明け(ギリシャ)
デモクラシー(民主主義)の語源はギリシャ語のデモクラティア。人民を表す「デモス」に権力を表す「クラティア」を組み合わせたものだ、とむかし習った。
その民主主義発祥の地ギリシャのアテネで、1992年11月、「政治権力における女性」と題する欧州サミットの第1回目が開かれた。
開催に尽力したのは、ギリシャの国会議員ヴァッソ・パパンドレウだ(元首相と同姓だが無関係)。
1944年生まれの彼女は、軍事政権が崩壊した70年代に左翼政党「全ギリシャ社会主義運動PASOK」創設に関わった。
80年代、政権を握ったPASOKは、女性差別撤廃条約を批准し、男女同一賃金、夫婦同等の権利、妊娠中絶合法化などを達成。
改革真っ盛りの1985年、彼女は国会議員に初当選し、その後欧州委員会初の女性委員になる。欧州委員とはEUの大臣である。
さて、そのアテネ会議では、女性が政界に少ないことを「民主主義の赤字」と呼び、男女同数(パリティ)にしなければ、赤字は解消されない、と合意された。
採択された「アテネ宣言」は、ヴァッソ・パパンドレウによって欧州全土の女性議員、全政府、女性団体に配布された。ポスターや葉書も作成された。
こうして「アテネ宣言」は、後の男女平等政策推進の起爆剤となった。1994年、EUに招待された私は、このポスターを持って帰国すると、和訳してあちこちに配った。
その宣言から20年、とんでもないギリシャの映像が私のパソコンに届いた。
2012年6月のギリシャ総選挙直前、各政党の国会議員7人が出演するTV番組「おはようギリシャ」でのこと。
「急進左派連合」の女性議員がネオナチ政党「黄金の夜明け」の男性議員に向かって「あなたがたが当選したらギリシャは500年前に逆戻りします」と言った。
するとブチ切れた「黄金の夜明け」議員が、手もとのコップの水を彼女の顔にぶっかけた。そして、制止しようとした共産党女性議員を、今度は何やら叫びながら平手で何発も殴った。
こんな衝撃シーンの放映後だから、「黄金の夜明け」は当選しないだろうと私は思った。が、彼を含む18人が当選した。
2014年10月10日
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