第17回 サッカー王国の闘女たち(ブラジル)
ワールドカップが始まり、世界の目がブラジルに注がれている。先日、オランダ対オーストラリアの試合があったのは南部の大都市ポルトアレグレ。ブラジルを代表する港町で、140万人が住む。
このポスターは、そのポルトアレグレ市がつくった。2002年1月29、30日「参加型民主主義と女性」と題する国際会議。会場はポルトアレグレ市議会議事堂。
私はブラジルに行ったことがない。このポスターは、ヨーロッパを歩き回ったときに知人からもらったのだが、言語はポルトガル語。「ブラジル」という文字以外、チンプンカンプン。ポスターの真ん中のマイクの影が“メスマーク”だから、女性の声を届けるための会議だろうと察しはつく。
しかしポルトガル語を辞書で調べる甲斐性もなかったので、ポスターは書斎の紙の山の下に隠れてしまった。
ところが、ワールドカップ・ブラジル大会が始まって、テレビはブラジルだらけ。サッカー音痴の私も、このポスターを思い出し、ブラジル女性に思いをはせることとなった。
悔しいことに今回のワールドカップは、オリンピックと違って男だけのイベントだ。ワールドカップの日本のホームページで女性が登場する欄は、「美人サポーター」と題されている。
しかし、この国を一皮むくと、闘う女性が現れるのである。
その代表格は、2011年に大統領に就任したジルマ・ヴァナ・ルセーフ(1947年生)だろう。彼女は、軍政下にあった1960年代には、非合法左翼ゲリラ組織の一員だった。秘密警察に2度も逮捕され、獄中で鞭や電気ショックによる拷問を受けた。
20代半ばで出獄した彼女は、進歩的土地柄のポルトアレグレ市に移り住んだ。政党活動が合法化されるや、ブラジル労働党に入党。その後、民主労働党に移り、さらには労働者党に。その一方で、ポルトアレグレ市財務局を皮切りに役人の世界を渡り歩き、同市のあるリオグランデ・ド・スル州の要職に上り詰めた。
2002年にルーラ大統領(労働者党)が登場すると、その右腕として辣腕をふるう。そして、後継者として大統領選に立候補して初当選。大統領就任後は、閣僚の3分の1を女性にするなど、マッチョ国ブラジルの変革に着手した。
さてポスターだが、この会議は、ルセーフ大統領の第2の故郷ポルトアレグレ市が主催した。事務局も市だ。共催のひとつは、先住民グアラニーの権利擁護団体。
市がここまで肩入れするのはなぜだろう、と思って調べると面白いことがわかった。ポルトアレグレ市は市民参加型予算編成をする先駆的自治体として有名なのである。市民が予算配分に直接関与する。これを連帯経済というのだそうだ。その連帯経済の支柱のひとつは、「地方政府のあらゆる分野に女性の参加を強めよう」だ。会議はそのために開かれた。
ブラジルは、サッカーだけの国ではない。すばらしい!
2014年7月10日
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