第16回  〝民主主義の赤字〟をどうする(EU)

5月27日、私のメールボックスは、EU議会議員選挙のニュースであふれた。

結果は、極右政党やEU反対党が議席を伸ばしたものの、中道右派の「ヨーロッパ人民党」と、中道左派の「社会民主進歩同盟」で過半数を占めた。

ところで女性議員は?  残念ながら27日時点では男女比が出ない。改選前は全議員の35%だった。

EU加盟国全体を網羅した女性団体が、「50%・50%」と名づけた運動をネットで繰り広げた。EU議会自身も、全加盟国の政党規則にクオータ制があるかどうかを調べて公表した。

EU議会の選挙は、1979年から5年ごとに行なわれ、今回は8回目だ。全751の議席は、加盟28カ国の有権者が選挙で選ぶ。各国の議席数は人口比を基本にすえるが、人口の少ない国には下駄をはかせる。選挙は、比例代表制である。

「おっ!」と思ったのは、スウェーデンで、フェミニスト党(Feminist Initiative)が1人当選させたこと。選挙前の世論調査に、女性では4人に1人が「フェミニスト党に投票したい」とあった。

結果は、投票率が低かったことに加え、男性票が伸びなかったのだろう、前評判ほどではなかった。しかし、有効投票数の5・4%を獲得し、スウェーデン20議席の1つに初めて食い込んだ。

フェミニスト党は、2005年、左派党の国会議員が旗揚げした。当然、主たる政策は「女性の権利の拡充」「性や人種による差別撤廃」。はじめは国政選挙で0・7%しか取れなかったが、徐々に伸びてきた。

フェミニスト党初のEU議員になったのはソラヤ・ポスト。ロマ人の人権活動家で、ロマ人の声を政策に反映させるために作られた法曹界や政府の審議会の委員でもあった。2013年に入党したばかりだが、党の候補者リストのトップに登載され、当選をはたした。彼女は言う。

「ロマ人は欧州に1500万人もいますが、どこでも迫害されています。ロマ人こそ欧州最大の被差別人種です。私の祖先は何百年も前からスウェーデンに住んでいました。母は私を産んだ後、不妊手術をさせられました。ロマ人ゆえに、です。スウェーデンに生まれ育った私は、今も2級市民です。ルーマニア、ブルガリア、ハンガリーでのロマ人排斥はさらにひどいものです。最近のナチズムの台頭、怖いですね」

彼女が当選できたのは、比例代表制選挙の賜物である。

今回のポスターは、1994年春、EU議会選挙を取材した時にもらった。

EUのシンボル12個の星がちりばめられた青地をバックに、女と男が握手している。男女不平等は民主主義の赤字。その赤字解消がEU議会選挙のキャンペーンだった。

その時、当選した女性は、まだ全体の26%。でも日本人の私は「4人に1人」に感動した。

2014年6月10日

 

 

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