第13回 くじけるな! 白いリボンの女たち(南アフリカ)
地はつやつや光る黒、中央に大きな白いリボン。
白いリボンは、女性への暴力に反対する運動のシンボルマークだ。これなら、字の読めない女たちにもよくわかる。
南アのマンデラ元大統領が死去した昨年、世界は、アパルトヘイト撤廃にかけた彼の一生を報道した。
マンデラは、1994年に大統領に選ばれた。翌1995年、国連の女性差別撤廃条約が批准された。1996年、新憲法が制定された。法文には、黒人差別撤廃だけでなく、女性差別撤廃の精神も強調された。
マンデラが代表する政党「アフリカ民族同盟」(ANC)は、党の綱領に30%クオータ制を導入。
これが引き金となって、南アの女性国会議員の割合は、1 9 9 4 年27・75%、1999年30%、2004年32・75%、と伸びていった。IPU(列国議会同盟)の最新の統計では、2009年は42・3%にまで到達し、今や、国会に女性が占める率は、世界第8位だ。
新生南アが誕生したころ、女性への暴力撤廃のための全国ネットワークができた。
ウエスタン・ケープ州の支援で州都ケープタウンに事務ぶ芸術局が新設され、全国8つの州と連携しながら女性への暴力をやめさせるキャンペーンが繰り広げられた。1999年、その運動が「家庭内暴力法」として実をむすんだ。
しかし、法はできたものの、変化の歩みは鈍かった。たとえば、ケープタウンの旧黒人居住区には70万人がひしめき合って暮らすのだが、失業率は60%以上で、貧困、強姦、麻薬、暴力、エイズが猛威をふるっている。飲酒と暴力におぼれた男性が多い中、大家族の日々の糧の調達は、女性の肩にズシリとかかる。
それなら、女性の地位が高いのかと言えば、違う。「女性が殴られたり、強姦されたりしない時は1分間もない」と言われるほど、女性への乱暴狼藉が蔓延している(ドイツ誌「シュピーゲル」)。
アパルトヘイトが、教育程度の低さの悪循環を生み、はびこる因習や迷信は、容易には消えない。強姦をした側の男性は、家族内でも地域でも大きな顔で振る舞い、犠牲者の女性たちは村八分にあう。被害を警察に訴える女性も少ない。警察に訴えても、起訴にいたらないことが多い。
だからこそ、白いリボンキャンペーンは続く。
2009年12月には、何百人もの白装束の女性たちが、ケープタウンのショッピングモールの駐車場に集まって、人間の鎖で巨大な白いリボンをつくった。その横に、殴打されて腫れあがった女性の顔の大写しが掲げられた。主催したのは、本ポスターをつくった「女性への暴力ウエスタン・ケープ・ネットワーク」だ。
世界で強姦事件がもっとも多い国は、南アなのだそうだ。くじけるな、南アの女たち!
2014年3月10日号
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